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株式会社ゴンウェブイノベーションズ
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AB3C CASE STUDY ・ 03

大阪・心斎橋 ・ 高級傘専門店(明治 29 年創業)

傘の 3 つの課題を解決

心斎橋みや竹

皇室御用達ブランドも扱う明治 29 年創業の高級傘専門店。「特急名入れ」「フルサイズショートアンブレラ」「傘 ID 紛失防止サービス」── 3 つのイノベーションで業界の課題を次々と解決し、「選ばれる理由」を作り出した。

仕入れ品の販売には限界がある


心斎橋みや竹は明治 29 年に心斎橋で創業した高級傘専門店だ。皇室御用達のブランド、前田光榮商店・小宮商店・ワカオなど、日本の職人傘を扱う。顧客層は 50 代以上が多く、1 本 1 万円から 5 万円程度する傘が中心だ。

ネット通販黎明期は商品の希少性だけで選ばれた。しかし今では、ブランド直販サイトや百貨店もオンラインに参入している。仕入れて並べるだけでは、「みや竹から買う理由」がない。選ばれる理由を作り出すことが急務だった。

仕入れ品販売の AB3C 分析図
仕入れて並べるだけでは AB3C が成立しない。「選ばれる理由」がゼロの状態。

第 1 の解決 ── 直販を凌駕する「特急名入れ」


贈り物として購入する場合、「名入れ」の需要が高い。しかし当時、傘の名入れには最低 2 週間、平均 3 週間もかかっていた。傘は長さがあるため一般的なレーザー刻印機には入らず、ハンドルを外して刻印し、また取り付けるという工程が必要だったからだ。

解決策は、別の名札を用意して括り付ける方法だ。小さい部品に名入れをしてから取り付けるため、時間がかからない。名入れ納期は最短 5 日に短縮された。イニシャルのみなら事前作成しておくことも可能で、贈り物需要に対して他社が追いつけない優位性が生まれた。

名入れ需要の AB3C 分析図
名入れ需要の AB3C。贈り物シーンでは「名入れ」が決め手になる。
特急名入れ後の AB3C 分析図
特急名入れで直販サイトを凌駕。「みや竹から買う理由」が生まれた。

第 2 の解決 ── 「持ちづらい・危ない」を商品開発で解消


年間 1 億本以上売れるビニール傘の存在が示すように、多くの人は「差さないときに邪魔」という問題を抱えている。傘が長いため、手を伸ばすと地面についてしまう。腕を曲げて持てばバッグと一緒に持てないし、横向きに持てば後ろの人に先端が向いて危険だ。

現代の洋傘はイギリス発祥で、当時は召使が荷物を持つ上流階級向けに、ステッキに近い長さで設計された。「自分で荷物を持ちながら傘を持ち歩く」現代の用途には設計思想が合っていない。

そこで小宮商店と協力し、生地面積はフルサイズのまま、全長を短くした「フルサイズショートアンブレラ」を開発した。片手で手を伸ばしたままカバンと一緒に持てる。使い勝手は大幅に改善し、かつ傘としての品質は一切落とさないという両立を実現した。

心斎橋みや竹の高級傘
フルサイズショートアンブレラの AB3C 分析図
フルサイズショートの AB3C。「持ちやすさ」という新しい競合軸を創出。
通常の傘の持ち方
フルサイズショートアンブレラの持ち方(比較)
フルサイズショートアンブレラの使用例

第 3 の解決 ── 「高級傘を買わない理由」を取り除く


高級傘の購入を躊躇する最大の理由は「失くすのが心配」だ。JR 四国「忘れ物白書」によれば、電車内忘れ物で最多は傘。JR 東日本によれば、傘に限定した返却率はわずか 1 割程度だ。

みや竹の店主は自身の連絡先を名札に記し、拾得主や駅の保管所からみや竹に連絡をもらう方法を考案した。手間やリスクをいとわない、この経営者の姿勢こそがイノベーションの源だ。

次の手として、名札の裏にみや竹の連絡先と傘 ID を刻印することにした。既存の名札システムを活用するため、コストと時間をかけずにスタートできる。紛失防止デバイス「MAMORIO」と異なり、すでに確立された社会インフラ(駅の忘れ物センターなど)を利用するため、普及コストもかからない。

傘 ID 紛失防止サービスの AB3C 分析図
傘 ID サービスの AB3C。「失くすのが怖い」という購買障壁を取り除く。
3 つのイノベーション後の AB3C 分析図
3 つを合わせた AB3C。選ばれる理由が重層的に積み上がった。
傘 ID 名札の実例
みや竹の傘・店舗

3 つの取り組みが生んだ新しい価値


特急名入れ・フルサイズショート・傘 ID の 3 つはそれぞれ、「贈り物シーンで選ばれる」「持ち歩きやすくなる」「高級傘を安心して買える」という、傘業界に長年横たわる課題を正面から解決したものだ。

小規模な傘の販売店でもここまでのイノベーションができる。小規模事業者のイノベーションに必要なのは、業界や社会の課題を解決するという視点だ。「集めるより集まる」——課題の発見から始めることで、競合が真似しにくい独自の選ばれる理由が積み上がっていく。

みや竹の総合的な AB3C 分析図
3 つのイノベーションを統合した AB3C
課題解決型イノベーションの AB3C 分析図
課題解決型アプローチの AB3C

イノベーションに大企業の資本は要らない。業界の課題を発見し、AB3C で解決策を設計すれば、小規模事業者でも「選ばれる理由」は作れる。